藤田 紘一郎 先生
■ 藤田 紘一郎 先生
藤田 紘一郎 先生
1939年、中国・旧満州生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、東京大学医学系大学院修了。医学博士。東京医科歯科大学名誉教授。人間総合科学大学人間科学部教授。NPO自然免疫健康研究会理事長。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。『原始人健康学』『水の健康学』『パラサイト式血液型診断』(新潮社)、『笑うカイチュウ』(講談社文庫)、『免疫力を高める快腸生活』(中経の文庫)、『アレルギーの9割は腸で治る!』(だいわ文庫)など著書多数。
医学研究から発せられる個々の情報は、細部では健康に有益な情報ですが、全体的には健康を害することも多々見られるようです。
ということで(本記事の内容が気になったら)藤田 紘一郎先生の健康法をもっと正しく理解できるように、若返りの法則「若返りの科学 医学が実証した本当のアンチエイジング」を実際に読んでみてください。
長寿遺伝子
■ 長寿遺伝子
長寿遺伝子
老化のスピードは人によって差があるもので、その差に関係するものの一つに長寿遺伝子があります。長寿遺伝子は、老化スピードをコントロールする遺伝子なので、若く見える人は、この遺伝子が活発に働いていることがわかっています。
そして、老化のスピードをコントロールするもう一つのものがテロメアというものです。
テロメア とは?
■ テロメア とは?
テロメア とは?
テロメア とは染色体の末端にある構造で、いわゆる染色体の尻尾です。
テロメアは細胞分裂を重ねるごとに短くなり、おのずと分裂の回数が決まってしまいます。
それゆえ、このテロメアは別名寿命の回数券と言われています。
このテロメアの短縮を抑制することで細胞の寿命を長らえる効果が期待できます。
テロメアのDNAは、細胞分裂のたびに末端から失われていき、出生時には1万塩基対ありますが、半分の5000塩基対まで減ると、人の寿命は尽きると言われています。
人は誰でも寿命があります。寿命に近づく現象を老化といいます。
この老化のスピードは人によって差があるのはご存じですよね?
見た目そのものです。
さて、そんなテロメアは、目で見えるものではありませんので、なかなか簡単に長さなんてチェックできません。ですから、見た目の老化度で判断されます。
南デンマーク大学公衆衛生研究所デンマーク双生児登録・老化研究センターのKaare Christensen教授は見た目が老けている人は、実際の寿命も短いという研究結果を発表しました。
若く見える人は、テロメアが長く、老けて見える人はテロメアが短いというのです。
つまり、老け顔の人は、テロメアが短いということであり、短命につながっているということです。
さらに、教授の研究によって、人の寿命は遺伝的要因で決まることはほとんどなく、寿命の75%は生まれてから、今日までの環境や生活様式によって決まることがわかってきました。つまり、テロメアを短くするかしないかは、環境要因、いわゆる生活習慣にかかっているのです。
2005年にロンドンのセント・トーマス病院のバレ博士らは、肥満や喫煙運動不足の人はテロメアが短いことを明らかにしました。
悪い生活環境がテロメアを短くしている可能性があるということです。
テロメアを短くしないで健康寿命を得る
■ テロメアを短くしないで健康寿命を得る
テロメアを短くしないで健康寿命を得る
さて、白澤抗加齢医学研究所所長 白澤卓二博士の研究をご紹介します。
白澤博士は、長野県高井郡高山村の住民を対象に調査、研究を続けています。
実は、長野県の男性の平均寿命は全国で最長で、しかも一人あたりの高齢者医療費は最低なのです。
この高山村には温泉があり、りんごやブドウの栽培農家が多く、高齢者が多く暮らしています。白澤博士はこの高山村に住む高齢者24人の赤血球のテロメアを測定しました。
その結果、24人中22人のテロメアが全国平均より長いことがわかったのです。
このことからも、テロメアを短くさせないことが長寿の要因になり得る可能性があることが分かります。
この地の人々は、地産地消の食物を摂り、ストレスのない田舎生活をしていることが多いのです。
そういった生活が、テロメアが短くなるのを防ぎ、健康長寿になるための秘訣なのかもしれません。
例えば、この地で採れるブドウやりんごには、抗酸化物質が多量に含まれています。
特にブドウには、長寿遺伝子をオンにするレスベラトロールが含まれています。
そうした果物を頻繁に取り続けていると、テロメアの短縮が起こらないのかもしれません。
このように、テロメアは上手に使えば、寿命を延長できる回数券の使用頻度を抑えることができます。
逆に病気になる食べ過ぎ、栄養のアンバランス、運動不足、運動過度、ストレスなど多数の要素が影響し合い、複雑に関連しあってテロメアは短くなってしまいます。
一方で、免疫力を高め、抗酸化力のある食品を多く摂るとテロメアは長く保たれます。
テロメアを長く維持する栄養素
■ テロメアを長く維持する栄養素
テロメアを長く維持する栄養素
テロメアを長く維持する栄養素として注目されているのは、レバーや緑黄色野菜、果物に多い葉酸です。
葉酸の欠乏によって、血管や神経を損傷するホモシステインという悪玉アミノ酸が血中に増えていきます。
このホモシステインがテロメアを短縮させてしまうので、葉酸をきちんと摂取する必要があるのです。
ただし何事もやりすぎは禁物ということで、葉酸の過剰摂取は健康を害することがありますので注意が必要です。
朝食を抜かない方がよい
■ 朝食を抜かない方がよい
朝食を抜かない方がよい
1日の摂取カロリーを減らせば、肥満もなく若返ると言って朝食を抜く人がいますが、それはとんでもない間違いです。
朝食を抜くと、昼食後に急激に血糖値が上がり、脂肪が蓄積しやすくなります。
朝食を食べないと食べている人に比べて、5倍も太りやすくなるというデータもあります。国民健康栄養調査によると、終戦直後の日本人の摂取カロリーは1903キロカロリーでした。
一方、2011年では1849キロカロリーで、摂取カロリーは現在の方が減っているにもかかわらず、肥満や糖尿病患者が増えているのです。
これは朝食をぬく、食事時間が不規則といった人が増えたからではないでしょうか?
最近、間欠式ダイエットブームの影響で1日1食または2食しか食べないという人も多いと思いますが、そういった方は空腹時間あけに、いきなり血糖値が上がりするようなものを食べないようにするとか、食事の時間が不規則にならないようにするといったことを行っていただきたいと思います。
また、肥満と酒の飲み過ぎもテロメアが短くなることもわかっているので、ぜひ気をつけていただきたいと思います。
体を錆びつかせる活性酸素
■ 体を錆びつかせる活性酸素
体を錆びつかせる活性酸素
現代社会は、加工食品やファストフードなどを食べることによって、活性酸素の発生率を増加させました。
また、大気汚染やシックハウスなどによる化学物質を含む空気を吸っても活性酸素は増えます。
この活性酸素は、老化を促進する因子ですから、体内でつくられる活性酸素が増えすぎることは大きな問題です。
私たちは生きている限り、活性酸素から逃れることはできないので、しっかり活性酸素を排除する試みを続ける必要があるのです。
それがよく言われる抗酸化力の強化というものです。
活性酸素を発生させる生活習慣
■ 活性酸素を発生させる生活習慣
活性酸素を発生させる生活習慣
私たちは、ミトコンドリア エンジンと 解糖 エンジンの2つのハイブリッドエンジンで活動しています。
ミトコンドリア エンジンでは、1日に500リットルの酸素を呼吸で取り入れ、食事でとった栄養素を燃やしてエネルギーを作り出しています。
しかし、この過程で取り入れた約2%が強い酸化作用を持つ活性酸素に変化します。
激しいスポーツなどで、呼吸が速まると活性酸素はさらに増えていきます。
また、加工食品を食べ、大気汚染などによっても活性酸素は増えます。
噛むという行為は、噛むごとに活性酸素を消す効果があるにもかかわらず、噛むことが減ってきたこと。
また、強いストレスにさらされたり、睡眠不足が続いたり、たばこを吸ったり、お酒を飲み過ぎたりしても活性酸素が増えます。
活性酸素が寿命を短くする
■ 活性酸素が寿命を短くする
活性酸素が寿命を短くする
活性酸素はテロメアを短縮してしまいます。
つまり、寿命を短くしてしまうということです。
活性酸素は細胞膜の脂質を酸化させたり、細胞核の遺伝子を傷つけるなどして老化を誘導していきます。
そして、長寿や老化のほかに免疫機能も活性酸素が関係します。
加齢による免疫機能の低下は、胸腺の萎縮が関係していると言われています。
胸腺はT細胞が分化繁殖する場所で、骨髄とともに免疫反応の中心的な器官です。
この胸腺の感受性が活性酸素に対して非常に高いことがわかっています。
歳とともに、私たちの体に備わった抗酸化力が低下すると、活性酸素によって胸腺が萎縮し、免疫機能が低下してしまうのです。
また、活性酸素はさらに糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞をはじめ、がんや認知症、アルツハイマー病などの深刻な病気の原因となっています。
活性酸素は、血液中の悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを酸化し、動脈硬化を加速させ、血管の老化を促進してしまいます。
以前に比べると、何となく肌のツヤがなくなったとか、ちょっと走ると息切れするようになったというのは細胞の酸化が進み、錆びつき始めた兆候かもしれません。
ただ、この脅威に対し、人は活性酸素を無害化する仕組み「抗酸化力」を持っています。
その中心が活性酸素から酸素を奪い取って攻撃力をなくす抗酸化酵素です。
ただし、一般的には体内で作ることができる抗酸化酵素の量や活性力は加齢とともに減少してしまうのです。
そうなると、どうしても体外から抗酸化物質を摂取して、抗酸化力を高めていくことが必要になります。
食生活での抗酸化力のつけ方
■ 食生活での抗酸化力のつけ方
食生活での抗酸化力のつけ方
体内の抗酸化力を高める抗酸化成分としてよく知られているのは、ビタミンCやビタミンE、また、セレンなどのミネラル、トマトのリコピンなどのカロテノイド、さらに植物の色素や苦味成分であるポリフェノールです。
お茶のカテキン、ごまのゴマリグナンなどもポリフェノールの1種です。
抗酸化成分の中には、体内で作られる抗酸化酵素をサポートし、その働きを長期的に持続させる力を持つものと活性酸素が発生すると素早く反応し、ダイレクトに働いて除去する短期間で力を発揮するものがあります。
しっかりとした抗酸化力で身体を守るにはその両方が備わっていることが理想です。
ですから、野菜、果物、海藻、きのこ 豆類、種子スパイス類など偏らずに食べることが大切なのです。
アンチエイジングのための抗酸化食品ですが、どの食品にどれだけの抗酸化力があるのかはなかなかわかっていません。
そこでアメリカでは、食品中のカテキンやフラボノイドなどの抗酸化物質やビタミンC、ビタミンEの量を総合評価して表示することにしたのです。
それがオラック値というやつです。
アメリカでは、すでにオラック値を表示した食品が数多く販売されているのですが、健康と若さを保つためには、この食品のオラック値を知ることがとても大切です。
ちなみに、オラック値の高い野菜は、アスパラガス、レタス、ブロッコリー、キャベツ、ニンジン、タマネギなどのようです。
また、自然界から抗酸化作用の強い物質を探したところ、プロポリスという物質が見つかりました。
これはミツバチが樹木や植物の芽蕾から集めた樹脂成分で作ったものなのです。
プロポリスには、ビタミン類やミネラル類、さらには強い抗酸化作用を持つフラボノイドが多量に含まれています。
また、抗酸化ビタミンのビタミンE、C、Aと抗酸化ミネラルのセレン、マンガン、鉄、亜鉛、マグネシウムも多量に含まれています。
そのことから、プロポリスは抗ガン作用や抗菌作用のほか、細胞の新陳代謝を高め、血管を強化し、抗炎症作用や抗疲労作用など多彩な効果を示す物質として認められています。
その中でも最も注目されているのは抗ガン作用です。
具体的には、発がん予防、がん化抑制、転移抑制、副作用の軽減などが言われています。
コロンビア大学がんセンターの松野教授によって、プロポリスががん細胞を殺す働きを持つことが確認されています。
さらに、プロポリスは正常な細胞には影響を与えず、がん細胞にだけダメージを与えることができるのです。
最近では、プロポリスがテロメラーゼの活性を抑えて、長寿を導くことも実験で明らかになっています。
まさにこのプロポリスは、自然界の万能薬といえるでしょう。これから先の研究にもぜひ注目してみてください。
老化の元凶 AGE
■ 老化の元凶 AGE
老化の元凶 AGE
血糖が過剰になると、私たちの体のたんぱく質に糖が結びつき、変質してしまいます。
その結果、本来のタンパク質とは似ても似つかない糖とたんぱく質の化合物ができてしまいます。それがAGEです。
体内に糖が増えると、たんぱく質はAGEに姿を変え、老化が始まり寿命を短くしていきます。
AGEはもともときれいなたんぱく質が砂糖をまぶしたようにベトベトになった状態の物質です。
そして、タンパク質の働きを失っているばかりではなく、AGEは体の外になかなか排出されず、体内に長期間留まって血管や組織にべったりと沈着し、さまざまな病気を引き起こすのです。
体内に糖が多ければ、それだけAGEはつくられやすいということになります。
ただし、注意しなければならないのは、AGEは高血糖によって体内でつくられるだけではないということなのです。
AGEがたくさん含まれている食べ物を摂ることで、体の外からも取り込まれ、それがすべて蓄積するのです。
トーストや焼きおにぎりなどでみられる褐色の焦げ色は、AGEが発生している証拠です。
玉ねぎを炒めたときにも、褐色になりますが、これもAGEが発生しています。
このように日常的に摂取している食事にAGEは潜んでいるのです。
もちろん、まったくAGEを摂取しないということは不可能でしょう。
しかし、なるべく摂取しないように心がけるということが大切だということを覚えておきましょう。
AGEが老化を促進
■ AGEが老化を促進
AGEが老化を促進
AGEの害を受けやすいタンパク質の一つがコラーゲンです。
コラーゲンは体内の全タンパク質のおよそ30%を占め、私たちの体型を保っているものです。
AGEがコラーゲン繊維の間に入り込んで、コラーゲンどうしを結びつけると必要な弾力と張力が得られなくなります。
コラーゲンは皮膚を構成するタンパク質であることはよく知られていますが、血管もまたコラーゲン繊維から成っています。
したがって、AGEは血管も老化させてしまうのです。
骨も乾燥重量の約半分はコラーゲン繊維ですので、AGEがつくと骨の強度も低下してしまうのです。
血管のコラーゲンがAGE化すると、弾力性を失うだけでなく、平滑筋細胞を刺激して数を増やします。
平滑筋細胞が異常に増えると、血管が厚くなり、動脈硬化を引き起こします。
さらにAGEががんを発生させることも分かってきました。
AGEはコラーゲンのような組織レベルのみではなく、細胞レベルであっても蓄積していることがわかっているのです。
そして、遺伝子情報を伝えるDNAにAGEが蓄積すると、がんが発生するきっかけになるとのことです。
藤田先生の著書に「脳はバカ、腸は賢い」
■ 藤田先生の著書に「脳はバカ、腸は賢い」
藤田先生の著書に「脳はバカ、腸は賢い」
人はバカな脳の指令で動いていて、賢い腸の言うことを聞かないから、いろいろな病気になると「脳はバカ、腸は賢い」に書かれています。
肥満に悩み、糖尿病になる人が増えたのは、バカな脳の言いなりになっているからです。
腸は糖質が嫌いです。
糖質をとっても、腸のエネルギー源にならないばかりか、余った糖がタンパク質と結合してAGE化すると体あちこちに蓄積し、脳梗塞や心筋梗塞、老化やがんを引き起こすことを腸わかっているのです。
白米やパンに含まれている糖質を摂ると、脳の報酬系が刺激を受けて快楽を感じるようになり、また糖質が欲しくなるという悪循環が生まれます。
ポテトチップスを1度食べるとやめることができないのも同じ理由です。
その結果、体の中で糖質が過剰になり、AGEが増えてしまうのです。
ハンバーガーやフライドポテトなどのファストフード、空気や紫外線に長期間さらされた干物、レトルト加工されて長時間保存された肉食品、マヨネーズやマーガリンが酸化して変色した部分、揚げ直したフライ や 天ぷら、電子レンジで加熱した食品、缶コーヒー・清涼飲料水などなど・・・
脳が欲しがる食品が実は体にAGEを作っているのです。
特に注意していただきたいのが、フルクトースコーンシロップという異性化糖です。
炭水化物に含まれるグルコースはタンパク質を溶かし、AGEを生み出しますが、そのグルコースよりもさらに危険な糖質がこのフルクトースコーンシロップなのです。
フルクトースコーンシロップは砂糖の6倍の甘さがあり、簡単に製造できるので清涼飲料水をはじめ、お菓子や焼き肉のタレなどに幅広く利用されています。
しかし、このフルクトースコーンシロップは、グルコースに比べてAGE化するスピードが10倍も速いことがわかっているのです。
依存性もグルコースより高く、1度摂取するともっともっと細くなる性質があると言われています。
ぜひ、どんな食品を食べる時も成分表をちゃんとチェックすることをお勧めします。
果糖ブドウ糖液糖や果糖液糖などと書かれていたら要注意だということを覚えておいてください。
さて、
藤田先生は、腸内環境をいい状態に保つことが若さを保つために最も大切なことだと言っています。
日本人の腸内細菌は、数が少なくバランスも崩れているので、腸内環境を整えて若さを保つことを学んで実践していきましょう。