ますだ美砂の優しい時間~short short story~ vol.3

ますだ美砂の優しい時間~short short story~ vol.3

箱を開ければ「お好きなカードを一枚どうぞ。」手にしたカードで人生が変わる?!…そんな、小さな小さなものがたり。


ジョーカー

ジョーカー

ジョーカー

連休中だけあって、街はどこもかしこも家族連れやら友達同士やらでごった返していて、休憩場所を見つけるのも一苦労だった。
途中、友達と買い物したいお店がそれぞれ違ったので、それじゃあ別行動して時間決めて先に休憩場所確保できたほうが連絡しよう、ということになっていた。

そして集合10分前、友達に電話してみたら案の定「まだ時間かかるから先に休憩してて」と。

やれやれ。

やっとの思いで見つけた一軒の古びた喫茶店。
扉を開けると、外があれだけ賑やかだったのが嘘のようにお客がいない。
一瞬ひるんだけれど、疲れには勝てず、覚悟を決めて席に座った。


「いらっしゃいませ」
お店のマスターは髪も髭も白髪がよく似合っている。私はコーヒーを頼んだ。

何十年も昔から時間が止まってしまったかのような店内。歴史が積み重なったと言えば聞こえはいいけれど、お世辞にもオシャレとは言いがたい。
BGMも流れてはおらず、ポコポコとコーヒーをドリップしているリズミカルな音と香りだけが唯一時を刻んでいるようだった。

居場所を友達に教えなくちゃ。

おそらくショップカードが入っているのだろう。テーブルのすみに小さな箱が置いてある。
フタを開けカードを一枚取り出すと、表面はお店の名前と住所が、そして裏面にはスペードの6が印刷してあった。

トランプ?

箱のフタにはCHOOSE ME「私を選んで」とメモが貼ってある。
私は箱からショップカードを全部取り出した。

お客が取っていったのだろう。ハートのエース、ラッキーセブンは見当たらない。

みんな考えることは一緒ってことね。

そんな中、ふと目にとまったのはジョーカーだった。
忌み嫌われるかと思えば、最強のカードにも化ける、いたずらをしかけたり、みんなをギャフンと言わせたり、ドキドキワクワク、遊び心いっぱいのカード。

そんな自分になれたらおもしろいのにな。

気を使ったり、空気を読んで良いひとの振りをして。
ほら、今だってどうせあの子が遅れることぐらいわかってるのに、待ち合わせの時間までにちゃんと買い物済ませて休憩場所も探してる…

「お好きなのを一枚、どうぞ」
マスターがコーヒーを置きながら、いたずらを仕掛ける共犯者のように私に微笑んだ。

「ありがとう」
私は迷うことなくジョーカーを手にした。

お店の住所を友達に知らせ、私はコーヒーをゆっくりと口に含んだ。
頼んだコーヒーには小さなクッキーが一枚ついていて、アイシングシュガーで「EAT ME」私を食べて、と描いてある。

もちろんですとも。
私は一口でほおばった。

お店はBGMも流れていない。ポコポコとコーヒーをドリップしているリズミカルな音と香りだけが唯一時を刻んでいる。

「ごめんねお待たせ。待った?」

そして友達が来たときには、私はすっかり消えてなくなっていた。




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