ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.5

ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.5

かわいい妹ができたお兄ちゃん。新しい家族のあり方で踏みだす小さな大人への第一歩とは?!…そんな、小さな小さなものがたり。


たからもの

たからもの

たからもの

ああ、妹がまた泣き出した。

「なんでおもちゃを取り上げちゃうの!」
そう言って母さんはボクの手から妹のおもちゃを取り上げた。

「だって」
「だってじゃありません!」

ボクは悔し涙をこらえて自分の部屋へとかけこんだ。
バタンッ。
わざと大きな音を立ててドアを閉めてやった。

だってさ、お人形についてるリボンを口に入れてひっぱるから、飲みこんじゃうかと思ったんだ。だからあわてて取り上げたんだよ。
心配したんだよ。

でもね、母さんは一度怒りだしたらボクの言うことなんか聞いてくれやしない。
いつだって母さんは自分が思ったことがいちばん正しいと思ってる。

ボクが妹のおもちゃを取り上げたのは、ボクが妹に嫉妬してるから。そう思ってるんだ。

生まれたばかりの妹はそれはそれは小さくて、お人形みたいで、とってもかわいい。
でもそう思うのはニコニコ笑ってるご機嫌なときだけ。
ぐずって泣き出すと何をしたって泣きやまなくてさ。
ボクが笑わせようがおもちゃを見せようが、ますますカンシャクをおこすだけなんだ。
母さんしか妹を泣き止ませることができないんだよ。

妹はまだまだ泣きつづけてる。
母さんは朝から晩までいつだって妹につきっきり。

わかってるさ。
「あなたはお兄ちゃんなんだから」って言いたいんだろう?

寂しくなんかない。

ボクは自分の服が入ってる引き出しの中をごそごそとかきわけた。
伸ばした手が奥のほうで硬くてひんやりした感触を見つける。
ボクはすかさず手繰り寄せる。
目の前に現れたそれは、ボクが見つけてくれるのを待ってましたとばかりにキラッと光る。

ボクの父さんは自転車に乗るのが大好きでね、「これはママチャリとはぜんぜん違うんだよ」ていうのが口癖だった。
これは父さんが修理したときに取り替えた自転車のパーツさ。

「パーツのどれが欠けても自転車はちゃんと走ってくれないんだ。とくにこの部品は重要な場所を担当してるんだよ」

そう言って父さんはこの部品の役割をとても熱心に説明してくれたんだけど、残念ながらボクは父さんの言っている半分もわからなかった。
でもね、なんだかとってもうれしかったんだ。

「これくれる?」
「ああ、もちろんだとも」

どこのパーツかもわからないけれど、
フクザツな形をしてて、手の中でずしんと重くて。
これを見るたび、ボクは父さんからとっても大切なことを任された気持ちになるんだ。

母さんに見せたってぜったいわかってもらえないものだけど。
母さんも妹も知らない世界をボクは持っている。
ボクだけの物語。

今度はね、ボクが妹に宝物をつくってあげる番なんだよ。




この記事のライター

関連する投稿


ますだ美砂の優しい時間~short shrot story~ vol.1

日常がハッピーに変わる瞬間。きっかけ作りは桜の魔法!? …そんな、小さな小さなものがたり。


ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.2

新生活。追い風にするも向かい風にするも春の嵐次第!?…そんな、小さな小さなものがたり。


ますだ美砂の優しい時間~short short story~ vol.3

箱を開ければ「お好きなカードを一枚どうぞ。」手にしたカードで人生が変わる?!…そんな、小さな小さなものがたり。


ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.4

ふと思い出した出来事があなたをそっと癒してくれる!?…そんな、小さな小さなものがたり。


最新の投稿


ナシレマに正解がない理由と、ナシレマとの接し方

「本場の味」の嘘:マレーシアとシンガポールへ行く前の方、あるいは行けない方が、ナシレマ というナシレマ皿から両国の違いを味わうための記事です。 実は、この料理に「本場の正しい味」は存在しないとか? その意外な理由と、日本にいながら本場に迫れる楽しみ方をご紹介します。


古事記がさす、もう一つの「日本三大神宮」の正体

あなたの「日本三大神社」三社目は、どこですか? 「日本三大神社の三社目はどこか」という素朴な疑問に、古事記と日本書紀から答えが出します。伊勢神宮と出雲大社。この二社に並ぶ三社目を、多くの人は熱田や春日と考えます。けれど古典をたどると、奈良に眠る意外な一社が浮かびました。行きたくなりますね。


「ならぬ」を誤解してた。会津で知った、150年伝わる言葉の正体。

「ならぬものはならぬ」という会津の言葉を、ただの精神論では終わらせません。多くの人が思う「理屈抜きでダメ」という解釈は、実は本来の意味と少しズレています。會津藩校日新館で生まれたこの一言が、なぜ百五十年を越えて胸を打つのか。その正体と、会津観光に出かけたくなる問いかけを書きたいと思います。


ひかりを、もう一度 ―さんむほたる 復活物語―

「昔は、ここに蛍がいたね」山武の谷津田、荒れた散策路で見つけた、たった一匹のホタル。その小さな光から、世代を越えて受け継がれる、ひかりの物語が始まる。 ※本作は、実際の蛍復活の取り組みに着想を得た物語です。登場人物は仮名で、一部に脚色を含みます。


50歳を過ぎると、人はなぜか周囲から「歩け」と言われ始める件

散歩って、なんで体にいいの? 近所のおばちゃんに聞いたら、想像の斜め上だった件。言われるがまま歩いていた男が、ついに「理由」を知った。


無料のLINE自動化ツール
『プロラインフリー』
公式LINE自動化ツール。通常月額2万円以上する機能が全て無料で使えます。

最近話題のキーワード

カラーズスタイルで話題のキーワード


AGE テロメア 食べて健康