卵屋さんシリーズ2 卵の価格について

卵屋さんシリーズ2 卵の価格について

冷蔵庫に必ず入っているといっても過言ではなく、日々の食卓に欠かせない「卵」。では、そんな身近な卵のことをあなたはどれくらい知っていますか? このシリーズでは、卵屋さんの目線で、色々な角度から卵を紹介していきます。せっかくなので、あまり知られてはいないであろう話題を集めてみました。 新しい情報満載で、卵への興味でいっぱいになるかも・・・。 シリーズの2回目は、卵の価格についてです。卵は安いもの!!でも本当に?知られざる卵屋さんの努力の一端がみなさんに伝わりますように。


日本の卵は安いです。「価格の優等生」と言われる卵は30年以上もほとんど変わらない価格で日本の食卓を支えてきました。販売価格が変わらないということは、生産コストも変わらない?・・・そうであれば、めでたしめでたしで今日の話はこれで終わりですが、残念ながら違います。卵の生産コストは年々上昇しており、卵屋さんの利益は減っているのが現状です。しかし、そのままでは日本の約2200の卵屋さんはすべて倒産してしまいます。今回は、そうならないための努力の数々をご紹介したいと思います。前半は卵の底値を上げようという業界全体の取り組み、後半は卵屋さんが個別で自分のところの売り上げをアップさせるための取り組みのご紹介です。
卵に限らず、物の価格を上げるためには、需要を増やすことが必要です。業界では、卵の消費を拡大するための取り組みを多数行っています。例えば、卵の記念日を制定し、イベントを実施しています。卵の記念日とは、6月2日と11月5日の年2回です。それぞれ語呂合わせになっているのですが、何かわかりますか?正解は、0602オムレツの日、1105いいたまごの日です。個人的にはなかなかナイスな語呂合わせだと思うのですが、いかがでしょう。他には、栄養面からアピールしたり、卵のレシピコンテスト、卵にまつわるエッセイコンテスト、卵クイズなどが各地で開催されています。最近ではイースターを流行らせようと頑張っているみたいです。イースターはキリスト教の復活祭で卵とウサギがモチーフとなっています。つまり、卵の消費拡大にはぴったりのお祭りなのですが、なかなか定着しない・・・。バレンタイン、クリスマス、ハロウィンとこれだけ盛り上がっている日本なら、流行るはずなのに・・・。原因はわかっているんです。「春分の日の次の満月の次の日曜日」これがイースターの日ですが、わかりづらいですよね。このハンデを乗り越えて、イースターを流行らせるアイデアがあれば、卵業界が喜んで買ってくれると思います。
ここからは卵屋さん個別の取り組み。みなさんは買い物に行った際、少し高く売られている卵を見たことがありますか?これがまさに卵屋さんの売り上げアップに繋がるものです。当たり前のことですが、普通の卵にいつもより高い価格をつけても誰も買ってくれません。これらの卵は、高い価格でも買ってもらえるように付加価値をつけたものです。この付加価値のつけ方にはいくつかパターンがあるのですが、一番多いのは卵に何かしらの栄養素を追加したものです。「健康」にお金を払う人は多いみたいですね。ビタミン各種、ヨウ素、DHA、EPA、鉄分、葉酸とこの辺りがメジャーなところでしょうか。これらは、鶏の餌に各栄養素を添加して、卵に移行させています。これもただ、対象とする栄養素をたくさん餌に添加すればいいというわけではありません。栄養素を添加することで風味が損なわれてもいけませんし、生産コストとのバランスも大切ですから、各卵屋さんの研究の成果です。ちなみに、ビタミンCだけは鶏が体内で合成できてしまうので、卵には移行させることができません。
一方でイメージを利用した戦略があります。その一つが、餌によってコントロールできる黄身の色です。「黄身の色は濃いほうが栄養がある」という話を聞いたことはありませんか。実はこれは間違っています。ですが、このイメージを利用し、高く売りたい卵の黄身の色は濃いオレンジ色になるように餌を調整しています。パプリカやマリーゴールドがその役割なので、それらが入っている分、栄養が高いと言えなくはないですが、誤差の範囲です。アメリカでは地域によって餌にする主生産作物が違うため、北部のトウモロコシの生産が盛んな地域では、黄色っぽく、南部のマイロがメインの地域は白っぽい黄身の卵が生産されています。最近は、日本でも米を食べさせて作る白い黄身の卵も話題になっています。また、「赤い卵は白より高級品で栄養が高い」。栄養価に関してはこれも間違ったイメージです。赤の卵を産む鶏の品種は体も大きく、餌をたくさん食べ、生産コストが掛かっているので、確かに赤い卵は白い卵より価格は高く販売されています。このイメージを利用して付加価値卵の生産は赤い卵が選ばれることが多く、赤い卵は高級というイメージがさらに広がっています。
鶏の飼い方を工夫して付加価値をつける方法もあります。こちらはさらに高い価格設定で販売されることが多いようです。その中でも1番の人気が放し飼いでしょう。「放し飼いで伸び伸びと育った鶏の卵は美味しい!」ということですが、一般の方には判断が難しいところだと思います。ワンランク上のこだわりのある富裕層の消費者をターゲットとした戦略です。
現在では以上のように多くの努力によって差別化が図られ、様々な卵が販売されています。たまには、いろいろな卵を食べ比べてみると面白いですよ。それぞれの卵にあった意外な用途や好みが発見できるかもしれません。


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