卵屋さんシリーズ4 養鶏の動物福祉

卵屋さんシリーズ4 養鶏の動物福祉

冷蔵庫に必ず入っているといっても過言ではなく、日々の食卓に欠かせない「卵」。では、そんな身近な卵のことをあなたはどれくらい知っていますか? このシリーズでは、卵屋さんの目線で、色々な角度から卵を紹介していきます。せっかくなので、あまり知られてはいないであろう話題を集めてみました。 新しい情報満載で、卵への興味でいっぱいになるかも・・・。 シリーズの4回目はちょっと真面目なお話を。家畜、家禽はペットと同じではないのか?欧米で話題の動物福祉についてです。


Animal Welfareという言葉を聞いたことがありますか。日本語ではそのまま「動物福祉」と訳されます。ペットやら、家畜やら、動物園やらの動物たちの幸せをちゃんと考えましょうという概念です。欧米では以前から話題になっていましたが、日本でも最近名前を聞くようになってきました。ここでは日本の卵屋さんの立場から見たAnimal Welfare(AW)についてのお話をしてみます。
日本の卵屋さんにとって、AWの普及は大きな問題です。今まで主流だった飼育方法を大きく変えなければいけません。養鶏に求められていることのメインは、「鶏にとっての快適な住環境を整えること」です。現在の日本の卵屋さんの飼育方法の主流は大規模でシステム化されたケージ飼いです。たしかに、見るからに広くはなさそうですが、鶏の品種改良をしている会社が出している飼養マニュアルの条件はクリアしています。これも元々は欧米からやってきた基準です。
日本は、国民一人当たりの卵の消費量が年間約330個で世界第2位という卵の大量消費国です。しかも、日本で食べられている卵の約97%が国産という、食料自給率の低い日本では珍しい食材です(ちなみに、残りの約3%は加工用の卵なので私たちが目にするのは国産の卵ばかりです)。ざっと計算しただけでも、日本でたくさんの卵が生産されているのがわかりますよね。国土の狭い日本ではこれだけの生産をするのは至難の業です。それを可能にしているのが、大規模でシステム化されたケージ飼いシステムです。このシステムのおかげで生産コストが抑えられ、日本ではとても安く卵を買うことができています。
AWの話に戻りましょう。AWでは「狭いスペースで飼われている鶏はかわいそうだから、もっと広いスペースを確保してあげるべきだ」と言われています。ベストは放し飼い。それが難しくてもケージの中に砂場や止まり木をつけなさいとか、最低でもケージの中で動き回ることができる十分なスペースを確保しなさいと言われています。欧米では、AW団体の運動が認められ、法律で鶏の飼育方法について決められたところが増えてきました。法律で決められていなくても、スーパーやレストランでは「基準を満たした卵しか使いません」というお店も増えてきました。実は日本でも外資系のレストランでは、数年以内に使用する卵を欧米基準にすることを宣言している会社もあります。日本が欧米の影響を受けないわけにはいかないので、日本の法律でも基準を定めようとする動きが出ています。その手始めが2020年の東京オリンピックに向けての取り組みです。近年のオリンピックは「地産地消」がテーマの1つになっているようで、東京オリンピックでも、提供される食事はすべて国産を使うことになっています。しかも、そこで使う食材は可能な限り欧米の基準に近いものにするため、JGAPという新しい認証システムが考案されました。JGAP自体はオリンピックに向けて駆け足で作られたものなので、AWに関しての正式な基準作りはまだまだこれからのようですが。
先日見たニュースで、フランスのフォアグラ生産に関するものがありました。フォアグラはガチョウに強制的に大量に餌を食べさせ、脂肪肝を作っていますが、これがやはり「かわいそうだから」と先進国の多くでは販売が禁止されています。フランス政府、生産者は「正しいマニュアルに乗っ取って生産しているから問題ない。」と主張しています。日本の卵屋さんと同じ問題を抱えているようですね。
では、日本の話に戻りましょう。「狭いケージの中で飼われている鶏」たちは本当にかわいそうなのでしょうか。残念ながら、鶏語を理解できない私たちには正解はわかりません。たしかに、傍から見ればかわいそうに見えるかもしれません。しかし、卵屋さんの意見としては、「卵を産む=子孫を残す行為」をしているということは、鶏たちにとっては「子育てをしてもいいかなー」と思えるくらいの環境だと判断できます。本当にストレスの掛かっているときは彼女たちは卵を産みませんので。それは無精卵でも有精卵でも同じことです。それに、世の中の卵屋さんたちは、「卵を低価格で販売する」というミッションの中で、最大限の愛情を持って鶏を育てているし、他の誰よりも鶏のことを考えています。それを無視して自分たちの感覚だけで「鶏がかわいそうだ」と糾弾するのはちょっと違うんじゃないのかなというのが個人的な意見です。
日本でも、小規模の卵屋さんの中には「放し飼い」を売りにしているところもあります。それは、卵屋さんのビジネスモデルの一つであり、他の卵と差別化を図り、自社の利益を確保するための一つの方法です。これらの卵がいくらで販売されているか知っていますか。スーパーに並んでいる卵と比較するとだいぶ高価です。今後、欧米とまったく同じような飼養基準が定められた場合、すべての卵がこれらと同じような価格になるでしょう。それでも、みなさんは今のように卵を買ってくれますか。もちろん、みなさんが買ってくれるのであれば、卵屋さんも鶏たちもとても幸せに暮らせるでしょう。ただし、日本の場合は高温多湿の環境なので、放し飼いで地面に鶏糞がある場合、菌が繁殖して病気が発生する可能性が高くなり、食品としての卵の安全性は少し心配になります。
個人的には、養鶏業界のAWの解決策は、各家庭で鶏を飼い、卵を採るようにすることだと思います。そうすれば、それぞれが思うように鶏を育てることができ、鶏の幸せも追求することができますよね。

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