卵屋さんシリーズ1 日本の卵事情

卵屋さんシリーズ1 日本の卵事情

冷蔵庫に必ず入っているといっても過言ではなく、日々の食卓に欠かせない「卵」。では、そんな身近な卵のことをあなたはどれくらい知っていますか?
このシリーズでは、卵屋さんの目線で、色々な角度から卵を紹介していきます。せっかくなので、あまり知られてはいないであろう話題を集めてみました。
新しい情報満載で、卵への興味でいっぱいになるかも・・・。

シリーズの1回目は、日本の卵事情についてです。まずは基本情報からいきましょう。

それでは、突然ですが問題です。
日本人は年間でどのくらいの卵を食べているのでしょうか?
さて、あなたの予想はどれくらいですか。


日本の卵 事情

日本の卵 事情

日本の卵 事情

「日本人の年間一人当たりの消費量333個、メキシコに次いで世界第2位(2017年度)」。
この数字が表す食品が何かわかりますか?
答えは「鶏卵」です。

家の冷蔵庫には常に卵が常備、毎日のように食べている・・・と納得の方も多いのではないでしょうか。
これだけ日本で卵が食べられているのには、大きな理由があります。

一つは、世界でも珍しい卵の生食文化があること。
有名処では、日本のほかにフランスでも生卵を食べるようです。
「生卵は美味しいのに何で?」というのは、当然の疑問。
ですが、栄養満点の卵は食中毒の原因となるサルモネラ菌にとって、格好の繁殖場所となります。

海外では、「卵はよく過熱して食べること」との注意書きも珍しくはありません。
これは、日本人がサルモネラ菌に対して抵抗力があるから!!というわけではなく、生食文化を守るための日本の卵屋さんの努力の賜物です。
まずは、卵を産む鶏がサルモネラ菌に感染しないように、すべての雛鶏にワクチンの接種を行います。これはすべて手作業です。

日本で飼育されている卵を生産するための鶏(採卵鶏)は、約1億2千万羽。
日本の人口とほぼ同じだけの数です。
ワクチン接種は2人1組で行い、ある農場での平均は1日に1組当たり3,500羽。この数字から作業の大変さが、少しはわかっていただけるでしょうか?!
しかも、人間の子どもと同様、雛鶏だって注射が嫌いです。
逃げ出そうとする彼女らを宥めながら、接種していきます。

他には、従業員の保菌チェック、鶏舎のこまめな清掃、野生動物の洗卵技術の向上、輸送トラックも対象となる徹底した衛生管理・・・。
これだけの努力があってこそ、私たち日本人は卵かけご飯を食べることができているのです。
ちなみに、卵の賞味期限は、「適正に保存した場合に安全に生食ができる保証期限」です。
賞味期限が過ぎた卵、ヒビのある卵、購入後も常温保管している卵等は、よく過熱してからお召し上がりください。

日本で卵が食べられる理由

日本で卵が食べられる理由

日本で卵が食べられる理由

日本で卵が食べられるもう一つの大きな理由は、価格が安いこと。
「価格の優等生」と言われることもある卵は、30年以上も価格の変動がありません。
スーパーの安売りの目玉商品ですし、毎週、卵の安売りの曜日をチェックして買い物に行く方も多いですよね。
実は、これも日本の卵屋さんの努力によるものです。
現在、日本の採卵鶏の鶏舎のほとんどは大型化、機械化されています。
技術の進んだ欧米から機械を輸入し、改良しながら、使いこなす技術を学んできました。
給餌、給水、換気、鶏舎の温度の調整、集卵、鶏糞の回収と人手の掛かる作業はすべて機械化。

鶏たちがコケコケ言っていなかったら、さながら工場という風情です。
機械化することで、人件費のカットにもなりますが、卵の安定生産にも一役買っています。
鶏は何も考えていないように見えますが、意外と繊細な生き物なんです。
世話をする人が変わっただけで、卵を産まなくなる子もいます。
そんな彼女たちにとって、機械で環境が安定していることは、安心して卵を産む環境が保証されていることになり、安定した生産を見込むことができます。
また、鶏舎は防疫面も考慮して窓のない造りになっており、天候、気温の影響を最小限に抑えることができます。

さて、少し本題からはずれますが、卵の価格の決め方も説明しておきましょう。
JA等が需給と供給のバランスを見ながら決定する鶏卵相場を指標にして決まります。
スーパーで買うときにはあまり変化がありませんが、冬場はやや相場が高くなります。
おでん、クリスマスケーキ、お節と需要が高くなるのがその理由です。

スーパーでの値段が変わらないのは、生産者(または卸売業者)とスーパーで、期間ごとに固定価格で取引をしているところが多いためです。

卵の生産の現状

卵の生産の現状

卵の生産の現状

安定した生産により、安定した価格を維持している卵ですが、卵の生産を取り巻く現状は大きく変化しています。
例えば、餌代の増加がその一つです。
鶏の餌となるトウモロコシ等はほとんどを輸入に頼っている状況です。
ガソリン代の高騰により、輸送コストも上がっていますし、バイオエタノール人気に伴い、作物そのものの価格も上がっています。
今では卵の生産コストの7割までをも餌代が占めています。
また、近年の人手不足や働き方改革の影響で、従業員一人当たりの人件費が上がり、全体の人件費が大幅に上がっています。
最近では、卵屋さんの利益は昔と比べて少なくなっています。
こうなってくると、更なる人件費の上乗せが難しく、養鶏場の人不足が深刻な課題となります。
機械化していても、生卵で食べられる品質を維持するためには、ある程度のマンパワーが必要ですが、このままでは持続的な経営が難しいかもしれません。
今後も、更なるコストの上昇が予想されます。
もちろん、卵屋さんも黙っているわけではありません。
その工夫は、別の機会でご紹介しましょう。


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