ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.2

ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.2

新生活。追い風にするも向かい風にするも春の嵐次第!?…そんな、小さな小さなものがたり。


春の嵐

春なんか大嫌いだ。

風は強いし、生ぬるいし、
新入生も新社会人も通勤電車じゃ立ち位置もぎこちなくて、
静かにしてほしい朝に友達と乗り合わせてぺちゃくちゃおしゃべりうるさくて、
ラッシュが余計ラッシュになって変に汗かくばっかりで。

フレッシュだか何だか知らないけど、私には新しいことなんか何一つもない。
毎日が同じことのくり返しなんだから。

私は電車からため息と一緒に吐き出されながら、怒涛の人の波と一緒にオフィスへと急いだ。

きゃっ

交差点を曲がったとたん、春の嵐が容赦なく吹きつけ、髪をめちゃくちゃにかき乱していく。

ああもう!だから春は…

「最低だね」

と私が言おうとしていたセリフを突然横でつぶやく人がいて、驚いてふりむいた。

「風、強すぎ」

と言って爽やかなはずの髪を同じように乱しながら、だけれど直すわけでもなく、くしゃくしゃのまま彼が私に微笑んだ。

「僕のこと覚えてくれてる?」
「同期だもん、覚えてるに決まってるじゃない」

忘れるわけがない。

「ちょっと太った?」
「し、失礼ね!」

久しぶりの再会に動揺している私にかまわず、彼はくしゃくしゃの笑顔を私に近づけた。

「異動で今日からこっち、本社勤務になったんだ。よろしくね」

え?

じゃまた、と彼は私をさっぱりと追い越し歩いていく。

ちょっと待ってよ・・・
よりによって髪がこんなくしゃくしゃなときに再会するなんて。

朝の陽射しがまぶしくて、思わず目を細めてしまう。
彼の背中はあっという間に人の波に消えてしまう。
木々は綺麗なうすい黄緑色の新緑を歌うように大きく揺らしている。
そして強い風は相変わらず私の髪を、服を、何もかもを大きくかき乱していく。

「ちょっと待ってよ」

なにひとりでしゃべるだけしゃべって行っちゃうのよ。
ああもう・・・
私は思わず小走りになる。

だって。

春の嵐が私の背中を押すんだもの。

関連する投稿


ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.5

ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.5

かわいい妹ができたお兄ちゃん。新しい家族のあり方で踏みだす小さな大人への第一歩とは?!…そんな、小さな小さなものがたり。


ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.4

ますだ美砂の優しい時間~short short story~vol.4

ふと思い出した出来事があなたをそっと癒してくれる!?…そんな、小さな小さなものがたり。


ますだ美砂の優しい時間~short short story~ vol.3

ますだ美砂の優しい時間~short short story~ vol.3

箱を開ければ「お好きなカードを一枚どうぞ。」手にしたカードで人生が変わる?!…そんな、小さな小さなものがたり。


ますだ美砂の優しい時間~short shrot story~ vol.1

ますだ美砂の優しい時間~short shrot story~ vol.1

日常がハッピーに変わる瞬間。きっかけ作りは桜の魔法!? …そんな、小さな小さなものがたり。


最新の投稿


新潟の地、農家に経営手法を取り入れた「すずまさ農園」スタートアップ!

新潟の地、農家に経営手法を取り入れた「すずまさ農園」スタートアップ!

新潟からレンタカーで、右側の日本海越しの佐渡島を眺めながら少し走ると「すずまさ農園」があります。日本海から、季節の楽しみと健康をお届けしようと、新規就農した「もとITエンジニア」お二人の物語が始まりました。


いっちゃんの東京まち歩きWalking お出かけ「江ノ島」編

いっちゃんの東京まち歩きWalking お出かけ「江ノ島」編

オリンピック噴水公園⇒弁財天仲見世通り⇒江島神社⇒江島神社辺津宮⇒江島神社中津宮⇒江島展望灯台前⇒山二つ⇒江島神社奥津宮⇒⇒岩屋洞窟前(折返し地点)⇒恋人の丘「龍恋の鐘」⇒児玉神社⇒さざえ島 このコースをインストラクターと一緒に歩くことができます。 詳しくは http://walkers-hi.jp/ を御覧ください


~フォトジェニックな○○~「桜」

~フォトジェニックな○○~「桜」

ソメイヨシノの淡い色は他にはたとえられない「桜色」ですね。 今年の開花ももうすぐ!満開になるのが楽しみです!


奥田政行シェフの料理哲学から「本物の”ご馳走”」が見えてくる

奥田政行シェフの料理哲学から「本物の”ご馳走”」が見えてくる

日々何気なく使っている「ごちそうさま」というセリフ。この言葉に込められた本当の意味をまさに体現している料理人をご紹介します♪


~フォトジェニックな○○~「桃の節句」

~フォトジェニックな○○~「桃の節句」

唐突ですが、ひなあられって淡くて優しい色ですよね。美味しいし(^^)